18さつめ プラトン『饗宴』 (岩波文庫)

★3 ディオティマは、愛するとは「肉体の上でも精神の上でも美しいもののなかで生産すること」だという。愛の目的は不死である。生産は、自らの分身を他者のうちで永遠に生かすために行われる。肉体への愛から学習を進め、精神における知識の愛へと至らねば…

15さつめ 西尾維新『ネコソギラジカル(下) 青色サヴァンと戯言遣い』 (講談社文庫)

★2 「世界って、終わらないじゃないですか」(289) そうっすね。この言葉で逆上する敵なので安い。戯言遣いは哀川潤を親にして、想影真心に通過儀礼という仮構を作ってやる。狐は空虚。どうしても折り合えない存在はどうしても存在するので殺す。これは良…

16さつめ 泉和良『エレGY』(講談社BOX)

★2 知人が読んでいたので。「今すぐ、パンツ姿の写真を送ってください」。主人公の名前は泉和良。作者の名前は泉和良。巻末の著者紹介といい、話の淡々としているがゆえのリアルさといい、私小説風なところが評価されたのだと思う。そうだとすると、泉和良…

14さつめ 川端康成『眠れる美女』 (新潮文庫)

★2 「ハーレムものの読者が主人公のハーレムものが読みたい」 「どうしてそんなこと思ったんだ?」 「だって主人公がモテても俺は蚊帳の外じゃん。俺だってモテたいよ」 「うーん、君の絶望に近いのは川端康成の『眠れる美女』だろうね。それと君の話だが、…

13さつめ 田山花袋『蒲団・重右衛門の最後』 (新潮文庫)

★3 2週目。思ったより独我論的じゃなく、語り手があちこちで登場人物の心に侵入している。「芳子を国に帰すですか」「芳子を父親の監督に移したです」という日本語が可笑しい。半事実への関心+1回目なら今でもそこそこ面白いでしょう。重右エ門はつまらなさ…

12さつめ 『限りなく透明に近いブルー』(講談社文庫)

★1 つまらっしゃい。何も起こらない小説なのである。解説の今井氏の解釈が「じつはどのような行為も存在しない」なので、こう書いてもそれほど的外れでもないだろうと思う。日常系だ。薬物と汚物と暴力を部室にした日常系。物語がなく、痛々しい告白がなく…

11さつめ 『マイノリティ・リポート―ディック作品集』 (ハヤカワ文庫SF)

★4 情報による人格の揺らぎ、気まぐれが興味深い『マイノリティ・リポート』が最良。難解なので読み返したい。世界線じゃなく時間線。『ジェイムズ・P・クロウ』は「創られた伝統」に関係する、いわばセカイ系。シュワルツネッガーの映画『トータル・リコー…

第一回ベストオブ10 1〜10

10冊読んだ中から最良の1冊を選ぶベストオブ10。村上春樹『風の歌を聴け』に決定。http://d.hatena.ne.jp/novel200/20120722/p1

10さつめ 倉橋由美子『パルタイ・紅葉狩り』

★1 う〜んつまらない。政治の『パルタイ』論争からSFやオカルトに行くのは一見不思議ではあるが、心情や形而上的な深さを感じさせないツルツルした文体なので、面白くするにはモチーフを突飛にする必要があったのかな。『合成美女』でストーリーテリング・…

9さつめ 古井由吉『杳子・妻隠』(新潮文庫)

★2 ミニマムな描写に微に入り細を穿ち過ぎて苦痛。著者は「内向の世代」の代表人。政治もサブカルチャーもない2人か3人の世界。「ロカンタンはマロニエの根っこに嘔吐した」的な、実存の不安、存在論、という感じだろうか。★1としたいところだが、『妻隠…

8さつめ 大江健三郎『性的人間』

★1 『性的人間』『セヴン〜』ともに性を通して閉塞した社会の超越に至る、というモチーフだが、痴漢が主題?だからどうしたが現代性であるし、大江の文体は神秘主義ではなく「小汚い」に留まっているように感じた。せいぜい体調の良い時に長編2作くらい読…

5さつめ 遠藤周作『海と毒薬』 (新潮文庫)

★3 満州パートなど、ドキュメンタリーの方が良いというテンプレ感がないではない。しかしヒヤリとする描写も多く、また「主体は官僚制や構造がつくる」構造主義的な表現は、新鮮に重苦しい。遠藤は「神なき日本人の罪意識を問う」としている。しかし、その…

6さつめ 野坂昭如『アメリカひじき』

★3 『アメリカひじき』は、ジブリで知られた『火垂るの墓』のパラレルワールドの続編にあたる(真剣)。もし、清太が生き残って、戦後社会を生きたら?日本語が酷く前半は酷い。ヒギンズが来日してからは面白い ※重要な小説は過去の読書メーターからインポ…

7さつめ 西村賢太『苦役列車』(新潮社)

★3 下品でやり通せない貫多(下の中)も、ニューアカサブカルかぶれの芸術肌アピールの癖に郵便局で小さくまとまる日下部(中の中)も、これを前田敦子で映画化する軽薄なギョーカイ人(上の下)も、すべてが不快。そして3者は私の中にいる。 36 40 58 66 …

3さつめ 谷川流『涼宮ハルヒの暴走』(角川スニーカー文庫)

★3 「ああ、楽しかったさ。もう一つ本音を言わせてもらえば、もうちょっとだけ平穏でもよかったとも思うんだ。オレ的には普通に部室で遊んでいる温いインターバルが、あとほんの少し欲しかった」(194項)。 2004年に「部室モノ」への流れを決定づけた功績…

4さつめ 成田良悟『BLEACH Spirits Are Forever With You Ⅰ』(JUMP j BOOKS)

★3 小競り合いで終わった。作者は『デュラララ!!』の成田良悟。まあ可もなく不可もなく。意外と人権感覚のある山じい、大蔵省より腐りっぷりがヤバイ中央46室、大前田父に虐められる砕蜂など、良質な二次創作という枠。敵はスワンプマンと人類補完計画で…

2さつめ 村上春樹『風の歌を聴け』

★4 学生運動に挫折した鼠。その挫折感は手を変え品を変え、執拗に繰り返す宇宙的な虚無感(「不毛さ」,124)に埋もれて、ハートフィールドの井戸の底に沈んでいく。一言で、ドライな中島義道。 http://book.akahoshitakuya.com/cmt/20755637風の歌を聴け (講…

1さつめ 三島由紀夫『夏子の冒険』 (角川文庫)

★2 ハルヒじゃねぇかぁあああ〜〜〜って感じの『涼宮夏子の冒険』でございます。「あたくし修道院へ入る」。松浦夏子は20歳の山の手型ご令嬢。言い寄ってくる男をとっかえひするけど、どいつも郊外のマイホームを夢見る器で、呆れて誰ともキスしない。ただの…